第30回「もう一度」(05年4月26日掲載)

TVのインタヴュー番組で、テイタム・オニールが出ていた。
『ロードショー』とか『スクリーン』を愛読していた私にとっては、とても懐かしい人だ。昨年の秋に、 告白本を出版したらしい。
史上最年少でオスカー受賞者となり、父親は当時ハリウッドの売れっ子二枚目俳優で、『ある愛の詩』のライアン・オニール。ファラー・フォーセットがダディのガールフレンドで、シェールのことを「友だち」だと言っていた彼女。16歳の誕生日に「テニスコートが欲しい」とさりげなく言っていたりして、なんて桁違いに幸せで恵まれた人なのだろう、と子どもの私はずっと羨ましく思っていたのだ。
時が経ち、彼女もすっかり大人になっていた。というか、年を取っていた。 そして「みんな、私がいい人生を送っていると思っていたのよ。誰も何も知らないの。私は一度だって自分の人生が幸せだと感じたことなんてないわ」と言ったのだから、私はたまげてしまった。
自分の女優としてのキャリアについても「何もわからない子供の時に、人からたまたま与えられたものだ」と言い放った。手にしたオスカーも、当時は全然、重みがなかったわけだ。
思春期にダイエットの為に父親から勧められてコケインを始めた。もっと普通の父親が欲しかったと言っていた。父親とはもう何年も口をきいていないのだそうだ。
ジョン・マッケンローとの離婚後、3人の子どもたちの親権も失った。
久しぶりの彼女のそんな言葉に、かなりショックを受けた。
今でも何冊ものスクラップブックとして本棚に残っている、彼女の写真や雑誌の切り抜きなどといった私の青春の思い出は、どうなってしまうのだろう?私が憧れていた世界は全部、虚像のものだったのだろうか。
インタヴューを見た後、十数年振りにもう一度、そのスクラップブックを開いてみた。
遠くを見つめるような、どこか寂しげなあの懐かしい彼女の笑顔があった。




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